時空間データ解析によるLJLのジャングラーの行動分類

はじめに

時空間データ解析を使って、LJL のプレーオフに出場した3チームのジャングラーの行動を分類し、それについて考察しました。

分類方法としては、樹形図を作成して、距離を使って分類しています。

これにより、このチャンピオンをピックしたときには、このルートを通ることが多いといったことがわかればと思っています。

目的

LJLに限らず、League of Legendsというゲームのプロの試合を観ていると、何らかの作戦を持って、ジャングラーは行動しているようにみえます。

たとえば、〇〇選手は、ガンクすることは少なく、レベル6あたりからレーンに顔を出すことが多い、だったり、〇〇選手がこのチャンピオンを使っているときは、序盤から敵ジャングルに侵入するが、違うチャンピオンのときは、レーンのカバーが多い、など。

レーンのチャンピオンによって、動きが変わってきますが、どのような動きをしていることが多いかを定量的に表せれれば、さらに観戦が楽しくなるのではないかと考えました。

そこで、今回は、ジャングラーの位置に着目し、時空間データ解析を使うことによって、何かしらの分類ができるのではないかという最初の検討として、分類を行ってみます。

用語説明

時空間データ

位置情報を連続的に記録した情報群を指します。

具体例として、サモナーズリフトでの時空間データを散布図で表してみました。

これを用いて、どのように動いたかなどを考えることが時空間データ解析と呼ばれています。

1秒毎の位置情報をプロットしたので、点の間のあいてしまっていますが、時空間データは連続しているものなので、線として表現されるべきです。

時間の順に点を結ぶと、軌跡を表す線を表現することもできます。

線を引くと図が複雑になってしまうので、上図では線は書いていません。

後に出てくる説明を理解しやすくなるように、時空間データは3次元のグラフで表される線であると思っていてください。

分類(クラスタリング)

まずは定義から。

クラスタリングは、データ解析手法(特に多変量解析手法)の一種。
教師なしデータ分類手法、つまり与えられたデータを外的基準なしに自動的に分類する手法。また、そのアルゴリズム。

引用元: wikipedia

と、あります。

様々な手法がありますが、今回は樹形図を作成することを目的としていることから、階層的手法について説明します。

クラスタリングについては、このページがとても参考になりました。
参考ページの言葉をお借りすると、

N 個の対象からなるデータが与えられたとき,1個の対象だけを含む N 個のクラスタがある初期状態を,まず作ります.
この状態から始めて,対象 x1 と x2 の間の距離 d(x1,x2) (非類似度)からクラスタ間の距離 d(C1,C2) を計算し,
最もこの距離の近い二つのクラスタを逐次的に併合します.

引用元: http://www.kamishima.net/jp/clustering/

要は距離の近いもの同士を繋げていくと、以下のような樹形図ができます。

樹形図から、枝の深さを見てグループ分けします。

どこの枝分かれから1つのグループとして、見るかは場合によって変わるようです。

このようにいくつかのグループとして分けることを分類と呼びます。

そして、分けられたグループのことをクラスタと呼びます。

調査対象

概要

LJL 2019 Summer Split のプレーオフに出場したチームのシーズン中の21試合を対象とします。

ただし、week11のBCvsDFM戦はピックされたチャンピオンが特別だったことから、調査対象外としています。

該当するチームは以下のとおり(敬称略、アルファベット順)

  • CGA
  • DFM
  • V3

チーム毎の試合情報

週、チーム名、そのときに使用したチャンピオンをハイフンで繋ぎ、箇条書きにしました。

チーム名は vs の左に書かれているチームが青側になります。

(1) CGA

  • week1-CGAvsUSG-Trundle
  • week1-DFMvsCGA-Skarner
  • week2-SGvsCGA-Trundle
  • week2-BCvsCGA-Trundle
  • week3-RJvsCGA-Sejuani
  • week3-CGAvsAXZ-JarvanIV
  • week4-AXZvsCGA-JarvanIV
  • week4-CGAvsV3-Sejuani
  • week5-DFMvsCGA-Xinzhao
  • week5-CGAvsUSG-Trundle
  • week6-V3vsCGA-Gragas
  • week6-BCvsCGA-Gragas
  • week7-SGvsCGA-Skarner
  • week7-RJvsCGA-Gragas
  • week8-RJvsCGA-JarvanIV
  • week9-BCvsCGA-Skarner
  • week9-V3vsCGA-Gragas
  • week10-USGvsCGA-JarvanIV
  • week10-CGAvsSG-Sejuani
  • week11-DFMvsCGA-Sejuani
  • week11-CGAvsAXZ-kindred

(2) DFM

  • week1-DFMvsBC-Aatrox
  • week1-DFMvsCGA-JarvanIV
  • week2-USGvsDFM-Trundle
  • week2-V3vsDFM-Elise
  • week3-DFMvsAXZ-JarvanIV
  • week3-DFMvsRJ-Trundle
  • week4-DFMvsUSG-Sylas
  • week4-DFMvsSG-Reksai
  • week5-BCvsDFM-Sylas
  • week5-DFMvsCGA-Trundle
  • week6-DFMvsAXZ-Sylas
  • week6-DFMvsRJ-JarvanIV
  • week7-DFMvsV3-Sejuani
  • week7-DFMvsSG-Sylas
  • week8-DFMvsRJ-Xinzhao
  • week8-DFMvsUSG-Sejuani
  • week9-DFMvsSG-JarvanIV
  • week9-DFMvsAXZ-Sejuani
  • week10-DFMvsV3-Sejuani
  • week11-BCvsDFM-Poppy (調査対象外)
  • week11-DFMvsCGA-Trundle

(3) V3

  • week1-V3vsRJ-Reksai
  • week1-V3vsSG-Reksai
  • week2-V3vsDFM-Xinzhao
  • week2-V3vsAXZ-Sejuani
  • week3-V3vsUSG-Reksai
  • week4-BCvsV3-Gragas
  • week4-CGAvsV3-Sylas
  • week5-V3vsRJ-Elise
  • week5-V3vsSG-Elise
  • week6-V3vsCGA-Sejuani
  • week6-V3vsBC-Gragas
  • week7-DFMvsV3-Karthus
  • week7-V3vsUSG-Xinzhao
  • week8-SGvsV3-Gragas
  • week8-AXZvsV3-Sylas
  • week9-USGvsV3-Trundle
  • week9-V3vsCGA-Karthus
  • week10-DFMvsV3-JarvanIV
  • week10-V3vsBC-Leesin
  • week11-AXZvsV3-Elise
  • week11-RJvsV3-Reksai

試合時間

上記の試合の何分までを調査対象とするかについて述べます。

結論からいうと、 14分までのデータを調査対象とします。

なぜ14分かというと、私の経験上、ジャングラーは序盤と中盤以降で動きが変わってくると考えています。

序盤は、赤バフor青バフスタート、どのレーンにガンクするか、ジャングルを縦に割るか否かといったところを決めたうえで動いていると思います。

一方で、中盤以降は、レーンの勝ち負けによって、動ける位置が変わってきます。

このため、ジャングラー以外の要因が時空間データに大きく影響を与えてしまっている可能性があり、影響が小さい時間について検討する必要があります。

具体的に何分までかを決めるうえで、1試合がどのように動いているかを考えます。

LoLの話から少し逸れますが、文献[1]では、Dota2 の試合を4つの段階に分けて説明を行っています。

たとえば、試合の平均が38分だと1段階あたり9分と捉えることができる。さらにいうと9分ごとに重要な動きが変わってくると述べられています。

これの元になった考え方が、文献[2]で、Dota2 の試合状況を表すパラメータを信号処理を行うことで、ルールを抽出しました。

具体的には、1試合において agility (agi), damage (dam), gold (gol), intelligence (int), strength (str)が上下する波を離散ウェーブレット変換を使って、データのノイズを除くと、大きな波になるそうです。

この大きな波が4つ存在することから、4つの段階で試合が進行していると捉えることができるそうです。

私はDota2について、詳しくありませんが、gol, dam 以外に、agi, int, strというパラメータがあるんですね。

Dota2をやったことある方だと、より理解できるのでしょうか。

ともあれ、この知見を利用して、同じMOBAという観点からLoLの場合でも、4分の1で説明できるのではないかと考えました。

LoLの場合でも離散ウェーブレット変換を使って、検討すべきですが、残念ながら未実施です。

しかし、経験上、4分の1で段階が移行してそうなかんじはしますよね。

LJL Summer Split 2019 の平均試合時間を求めると、28分になりました。

これを4分の1にすると、7, 14, 21, 28分に段階が次に以降するという説明になります。

7分はソロレーナーがレベル6になる、14分はタワープレートが消える、21分付近にはバロンが出現し、28分にはネクサスが割れます。

このように書いてみると、上述した時間を意識して、動いていそうなそれっぽい説明ができます。

以上のことから、本記事では、LJL Summer Split 2019の試合には、4つの段階があり、1段階あたり7分であること前提で進めます。

次にどの段階までを対象とするかについて。

これは、7分までになると短すぎで、21分までとなると、長すぎるので、間をとって14分がよいと考えました。

ちょうど、タワープレートが消える時間ということもあって、一番納得しやすかったのもあります。

以上のことから、調査対象とする時間は14分までとなりました。

データ収集と分類の方法

データ収集方法

試合の動画を1秒ごとに区切り、物体検出を用いて、境界ボックスの中心を追います。

物体検出については、こちらにまとめています。

YOLOを用いたミニマップのチャンピオン検出器の作成とデータ生成手法の紹介

今回はこれを用いて、調査対象のチームのジャングラーがシーズン中に使用したチャンピオンの位置を取得します。

分類時の問題

時空間データでも距離を求め、分類を行っていきたいのですが、注意が必要です。

時空間データは、用語説明で図に示したように、3次元で表現される線です。

この線には、空間的な距離と、時間的な距離をもっており、異なった性質を持っている可能性があるため、単純に比較することができません。

たとえば、1mを100秒かけて行動した場合と100mを1秒で行動した場合では、グラフ上のユークリッド距離が同じように見えてでも、意味は大きく異なります。

つまり、分類を行うための尺度を定める必要があります。

また、空間的な性質と時間的な性質を持っているため、距離を比較しようとすると意図しない部分で類似していると判断されてしまう可能性があります。

2次元のグラフを用いて、説明すると以下のようになります。

1のグラフが2, 3のどちらと似ているか、という問いに対して、単純に距離を比較した場合を図示しています。

距離の測り方にもいろいろとありますが、2つの線の間の面積を距離とすると、1と2 より 1と3のほうが距離が小さいように見えます。

しかし、頂点の数といったような線の特徴を考えると、1と2は頂点が2つ、3は頂点が6つと異なっているため、どちらかというと1と2 が類似していると判断すべきのように思えます。

極端な例で説明しましたが、このようなことが3次元空間上では起きやすいんですね。

具体的には、同じ順番に移動したとしても、少し行動する時間が違っただけで、距離が大きく見えてしまうといった問題があります。

まとめると、時空間データを分類するためには、以下の2つの問題があります。

  1. 尺度が決まっていない
  2. 意図しない部分で類似していると判断されてしまう可能性がある

このような問題に対して、これを地理情報科学では、配列アライメント手法(シーケンスアライメント)を使って分類しています。

これは人々の行動の類似度を示す手法として、高い実績をもっており、動物園や美術館での行動分析に使われています[3] [4]。

まずは、配列アライメント手法について説明します。

もともと、配列アライメント手法は、生命情報科学で用いられており、wikipediaでは、以下のような説明があります。

シーケンスアラインメントとは、DNAやRNA、タンパク質の配列(一次構造)の類似した領域を特定できるように並べたもので、
機能的、構造的、あるいは進化的な配列の関係性を知る手がかりを与える。

引用元: wikipedia

DNAやRNAといった核酸は3次元構造を取り、前述した問題と同じようなことが起こり、分析が難しいため、文字列に変換し、類似度を計算しています。

2つ以上の文字列を同一あるいは似た性質の文字が並ぶようにギャップを挿入し、いくつギャップが挿入されたかが類似度の指標になります。

具体例を用いて説明します。

先ほどのグラフを流用すると、距離だけみると、3と類似していると判断されうる場合でも、軌跡を何らかのルールに従い、特徴を表す文字列に変換すると、

2のグラフは、1のグラフに何らかの情報が付与されただけで、残りは同じ、

一方で、3のグラフはそもそも違う性質なので、それを埋めるためのギャップが多く入ります。

ギャップの挿入された数をみると、1は2と近い性質をもつということがわかります。

このギャップがどれだけ入ったかを類似度の指標として用いることで、1. の問題に対処し、特徴を表す文字列を時系列順に並べ、ギャップを挿入するため、2. の問題にも対処しているといえます。

次に、特徴を表す文字列について説明します。

文字列の設定

配列アライメント手法を行うためには、時空間データを特徴のある文字列に変換する必要があります。

地理情報科学では、遊園地や美術館の区間ごとに文字列を割り振り、どこに滞在したかを表すように文字列を指定するそうです。

なので、それを参考に本記事でも、サモナーズリフトを意味のある区間ごとに私の判断で区切りました。

区切った図は以下のとおり。

各レーン、ジャングル、ベース、中間はどちらの領域でもないため、別領域として表現しています。

もう少し分け方に工夫ができたかもしれませんが、今回はこれでいきます。

また、検出方法の関係上、検出できないときもあります。(例: 他のチャンピオンと重なっているとき、デスしているとき、リプレイが入ったとき)

このときには、検出できなかったという情報が類似しないようにするために、N_( _ にはa-zの文字列) を設定しました。a-zは、チーム毎、試合毎に使い分けています。

具体的には、week1-DFMvsCGA-Skarnerで検出できないときは ‘Na’, week2 では ‘Nb’ と割り振っています。

これにより、試合毎に検出できないときの文字列が異なるため、これを一致させようとするためにギャップが挿入されることはありません。

以下に取得した文字列の例とギャップが入った例を載せておきます。

▼ 取得した文字列の例

▼ Clustal Xを使って、ギャップが挿入された例

分類結果

説明

先ほどの文字列を整列し、ギャップの数によって、樹形図を作成しました。

それぞれチーム毎の青側のとき、赤側のときで樹形図をわけています。

なぜなら、青側と赤側では動きが全く異なり、比較対象にならないため。

分類結果をチーム毎の青側、赤側で載せています。

なお、DFMの試合はほとんどが青側で、赤側が3回と樹形図を作るための回数に満たしていなかったため、青側のみ対象となっています。

また、図にクラスタの名前を追記し、図の下にクラスタの特徴を記載しています。

特徴は、今回取得したデータの類似点を主に取り上げています。

なので、試合の映像を確認しながら書いているわけではないので、間違った特徴を書いてある可能性もあります。(例: ×ガンクしている、◯通っただけ)

間違いにお気づきの際は、お知らせいただけると幸いです。

CGA

(1) 青側

Aの特徴: スタート時点は違えど、ボットサイド重視する群。自陣のジャングルでファームを行い、相手の青バフ付近に向かう。相手ジャングルの青バフ付近で戦闘を行う。

Bの特徴: 青バフスタート。バフを狩ったあとは相手の鳥をチェックし、自陣のジャングルを狩り、蟹の管理へ。リコールを挟み、ファームした後に相手の鳥の位置からのミッドガンク。ミッド重視の立ち回り。相手のトップジャングルに侵入する。相手の鳥付近に立ち入る率多め。

Cの特徴: 赤バフ→岩→鳥→狼→青バフ→蟹 の順に狩り、リコールを挟む。序盤はボットジャングルでファームのみを行い、トップサイドの相手ジャングルに入る動き、Ultを覚えたあたりからボットジャングルに入ることが多く。ドラゴン、ボットサイドでの動きに切り替える。

(2) 赤側

Aの特徴: 赤→ゴーレム→鳥の後に何らかの行動(ガンクor相手のジャングルに入る)を起こし、リコールを挟み青サイドにむかう。そのまま赤側に移動し、蟹の管理、トップ側でファームし、レベル6を目指す。レベル6になると、ボットジャングルに入っていき、行動を起こすことが多い。

Bの特徴: 赤バフ→岩→鳥の後にリコールを挟み、青サイドに動く。青側を狩ったあとは相手のジャングルに入る。その後、トップ側、ボット側どちらでもで自陣ジャングルでファームし、相手のジャングルに入る動きを繰り返す。

Cの特徴: 序盤はBと同じく、赤バフ→岩→鳥の後にリコールを挟み、青サイドに動く。青側を狩ったあとは相手のジャングルに入る動き、ゴーレムまで入っていることからボット重視の立ち回り。Bと似た動きになっているが、相手のジャングルに侵入できていない模様。川までor 青バフの確認しかできていない。

Dの特徴: 赤バフ直後か鳥を狩ったあとに相手のジャングルに入る。トップガンクできそうなときはする。序盤はジャングルを縦に割る。2周目以降は、ボット側に寄り、ジャングルに入っていく動きが多い。

DFM

(1) 青側

Aの特徴: 最初から相手ボット側のジャングルに入り、3キャンプ狩る群。リコールしてから自陣の赤バフサイドのジャングルでファームする。トップにはほとんど行かず、相手の青バフ付近に立ち入ることが多い。10分頃(ヘラルドのタイミング?)に相手の青バフではなく、赤バフ付近を管理するようになる。

Bの特徴: 基本的に青バフスタート。トップでのファーム後に、相手のジャングルでファームを行う。ジャングル縦に割っている群。week4-DFMvsSG-Reksaiに関しては赤バフスタートで、相手の青バフに入っていることから、ボット側でジャングルを縦に割っている。

Cの特徴: 青バフスタート。蛙、狼は狩るか否かは試合による。赤サイドに移動し、ラプターに触るときもあれば、触らないときもある。ファームは最低限行い、自陣のバフの管理とカニの管理、ガンクやレーンカバーに入る動きが多い。どの時間帯も相手ジャングルに入っている回数は少ない。

V3

(1) 青側

Aの特徴: 青バフ→狼→鳥→赤バフ。リコールを挟み、岩を狩る。ボットの蟹を確認して、トップの蟹の確認をしてから、トップガンク。その後は鳥→ゴーレム→ウルフ→グロンプの順にファーム。
Bの特徴: 赤バフ→岩→鳥or蟹。2周目から、岩→鳥と狩ったあとに、相手のトップのジャングルに入る。その後、自陣トップジャングルでファーム。3周目以降もこの動きを繰り返し、ミッドorトップにガンクできるときはする。
Cの特徴: 序盤はBと同じで、赤バフ→岩→鳥or蟹。中盤までファームして、2回目の赤バフのタイミング以降(具体的には、1回リコール挟んだ後)に相手の青バフに侵入する。ミッドに移動したあとに、ボットレーンorジャングルに向かう。自陣トップ側のジャングルは最低限のファームだけ行い、ミッドかボットにガンクすることが多い。
Dの特徴: 青バフ→狼→赤バフ→岩→鳥→相手のトップ側ジャングルと進む。2周目以降は、トップ側に行くことは少なく、岩と鳥、蟹でファーム。トップに行くかわりに相手のボット側のジャングルに入ることが多い。

(2) 赤側

Aの特徴: 赤バフスタート。その後はまちまちで、相手のジャングルor岩or鳥→青バフなどがある。似ている部分は、狼を狩ったあとに、相手のジャングルに入り、リコールする。リコール後はトップサイドからファームを始め、蟹の管理をした後に相手のジャングルに入る。2回目の赤バフタイミングでファームを行い、ボット側の川に移動する。相手ジャングルに入ってからボットガンク、鳥を狩ってミッドガンクor相手のトップジャングルに入るといった動きが多い。

Bの特徴: 青バフ→蛙→狼→鳥→赤バフと進む。途中に1回何らかの行動を起こす。具体的には、青バフ後に相手のジャングルに入る、赤バフ後にトップガンクor相手のジャングルに入るなど。リコールを挟み、相手のボットジャングルに入る。ボットにガンクができそうならボットガンク。その後は、自陣ジャングルに戻り、トップガンクor相手のジャングルに入る。さらにその後は、ボットに向かい、岩からファームし始めてボットに降りて、ボットガンクor相手のジャングルに入る動きをすることが多い。

考察

チャンピオンの偏りでみると、CGAの赤側 クラスタAが特徴的だと思います。JarvanIVをピックしたときに、赤→岩→鳥のルートで何らかの行動を起こしていることから、JarvanIVが強い時間を活かそうとしていることが読み取れます。

JarvanIVのRは強力ですから、レベル6を急ぐことも納得できます。

クラスタAでは、他にGragasが存在しますが、クラスタBにも存在するため、立ち回りが一通りではなさそうです。

1つのチャンピオンで複数のグループの特徴をもっていることと、得意チャンピオンとの関係してるかもしれません。 相手のカウンタージャングルなどの動きに合わせると偶然そうなった場合もあるので一概には言えませんが。

次に週の違いについて。

CGA, V3は週による偏りは見受けられませんでした。

一方で、DFMの青側 クラスタAはweek1 と week3のみでシーズン前半の週が集まっています。

クラスタAの特徴として、相手の青バフに強引に入っていこうとする動きがあるため、DFM側から仕掛けていると考えられます。これを他の試合では観測できなくなったことから、作戦を変えた可能性が考えられます。

クラスタA, B, Cの中でCが一番多いことから、Cの特徴に寄せていったかもしれません。

クラスタBはジャングルを縦に割っている群で、縦に割るか否かの判断は自分だけではできませんから。

相手が入ってきたから仕方なく、相手のジャングルを狩るといった試合もクラスタBのいくつか含まれていると考えられます。

最後にチーム毎の特徴について。

図からは読み取れませんが、図を作る過程で、青側のときにリスポーン地点からボットのジャングルに入る位置が気になりました。

具体的には、ボットのジャングルにミッドから入るか、ボットから入るか、です。

CGA, DFMはミッド側から入っていることが多く、V3はほとんどがボット側から入っています。

ボット側から入ると、当時経験値効率が最も高かった岩を狩ることができるので、それが影響しているのかなと思います。

もちろん、最初の順番によって変わってきますが、相手のジャングルに入ることやガンクをすると、順番は関係なくなってきて、鳥と岩が共に沸いている状況になりますが、その状況でも同じことが見受けられました。

これは、選手毎の考え方が表れているのではないかと考えられます。

鳥→岩→蟹というルートと、岩→鳥→蟹というルートでは、通る場所が変わってくるので、ミッド、ボットどちらがワードを置くべきかにも繋がるので、深く調査するとおもしろいかもしれません。

ただ、ボットにガンクしたかったから、相手のトップジャングルに入りたかった、という理由で入る位置を決めている可能性もあるので、これについても一概にはいえません。

おわりに・反省点

LJL の一部ジャングラーの時空間データを解析してみました。

どの樹形図も根からの距離が近くて、共通した特徴があるのか、と思っていましたが、よく見ると共通点は見つかりました。

ジャングラーの位置だけに着目してるからこそ気づける部分(ジャングルの入る位置など)もあったので、収穫はあったように思います。

逆に、ジャングラーの位置だけでは、特徴を捉えきれていない部分もありました。

たとえば、相手のジャングルに入っているのは、レーンが押せているからか、レーナーの体力が少ないからか、といった部分が捉えきれませんでした。

レーンに関わらず、相手のジャングルに入る群、レーナーのHPが低いとタワーダイブを狙う群といったような分け方ができればさらにおもしろかったように思います。

ただ、これをやろうとすると、レーナーかつ、HP、ミニオン状況なども取得する必要があり、難易度が跳ね上がるので、それは少しずつ進められたらと思っています。

また、今回はチーム毎に分けましたが、LJLというくくりで分類してみてもおもしろかったと思います。

違う選手が同じチャンピオンでも動きが全然違う、具体的にどう違うかなども考察できそうに思います。

LJLに限らず、各地域をまとめて分類してみてもおもしろいですね。作業見積もりはできていませんが、なんとなくすごく大変そうな気がしています。

次に、根から近くなり、特徴に差がないように見えてしまうことについて、改善する必要があると思っています。

同じクラスタに属しそうだけど、厳密には違うこと(例: 鳥は通るだけで赤バフ直行)があるので、その部分も細かく分けれればさらによくなっていたと思います。

このように枝分かれしている部分が根から近くなり、特徴に差がないように見えてしまうのも、時間帯を考慮していなかったのが問題なような気がしています。

動物園での検討では、ギャップの値とそれがどの時間帯のものかという2つの指標に基づいていて、実際のギャップを大きく捉えるか、時間帯の類似度を大きく捉えるか、で分類を行っているんですね。

たとえば、ギャップの係数を0.2、時間帯の差分の係数を0.8とし、その合計が実際の差分にするといったような計算になります。

この係数は、足して1になっていればよくて、0.5と0.5にするなど、いろいろ試すと特徴が見えづらかった樹形図も見えるようになるという報告もあるので、試してみる価値はあります。

そもそもなんで、この時間帯が必要かについて、動物園では、入場時間が一定でないことがあると思っています。

具体的に、時間帯の考慮がない場合だと、休憩所での一致が多く発生するみたいです。

それが、入場直後か、途中なのかに関わらずです。

たとえば、午前から入場した組と、正午から入場した組があったとして、同じ時間に休憩所で、昼食を取ったとします。

午前からの組は、途中に休憩所というデータが取れますが、正午からの組は、入って早々に休憩所というデータになります。

この2組の午後からのプランが全く一致していたとしても、途中に休憩所にいた時間をそろえようと多くのギャップが入るため、違う組として判定されるわけですね。

これを防ぐために、時間帯を表現する文字列を1つ追加しなければならないのですが、それを行えなかったのが問題かもしれません。

今回それをやらなかった理由としては、LoLのジャングルは開始時間が一緒で、時間帯が違う=行動が違うと考えていたからです。

考慮したからといって、特徴がわかりやすくなるかはは不明です、〇〇分の時点でドラゴン前にいるという情報が顕著になってくるのでしょうか。

最後に、樹形図を作成して、特徴を記載しましたが、試合の録画との見合わせはできていません

なので、特徴の間違いやこの試合はクラスタ◯に分類されるべきといったことはたくさんあると思うので、お気付きの点があれば教えていただけたらと思います。

私だけでは考察しきれていないこともあるので、皆さんの考察を聞けたらと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献

[1] P. Yang, B. Harrison, D. L. Roberts, “Identifying patterns in combat that are predictive of success in moba games”, Proc. Foundations of Digital Games, 2014.

[2] P. Yang and D. L. Roberts. Extracting human-readable knowledge rules in complex time-evolving environments. In Proceedings of The 2013 International Conference on Information and Knowledge Engineering (IKE 13), Las Vegas, Nevada USA, July 2013.

[3] 矢部直人, GPS データに対する配列解析の援用.地理情報システム学会講演論文集, 19, 181-190.

[4] 矢野颯斗, 松永菜摘, 泰井良, 渡邉貴之, 配列解析を用いた美術館における鑑賞行動分析とその可視化.第79回全国大会講演論文集 , 2017, 955-956

mataro

Twitter: @LolMataro

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