征服者ケインと電撃ケインの違いについて
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はじめに
以前から気になっていたケインのルーンの違いについて考察したいと思います。
最近では征服者と電撃のどちらかが多いみたいなので、両者の違いについて述べていきます。
どちらがどういった点で強いのかを明確にすることを目的としています。
調査対象の詳細
ルーン
電撃
3秒以内に敵チャンピオンを個別のスキルかAAで3回攻撃すると、追加アダプティブDMを与える。
追加DM: 30-180 (+0.25AP) + 増加AD × 40%
バーストを目的としたルーンになります。
以前はほぼこのルーンだったんですが、ダーキンの場合、征服者も見られるようになりました。
電撃による追加ダメージ(EL)を式に表すと以下のようになります(LV: レベル、AP: 増加AP、AD: 増加AD)。
$$EL=(8.82LV+21.18)\times(1+0.25AP)+0.4AD\tag{1}$$
征服者
敵チャンピオンにAAかスキルでダメージを与える毎に1スタック(2s, Meleeは8s)増加し(最大5スタック)、スタック毎にアダプティブボーナスを獲得する。
最大5スタックになると敵チャンピオンに対するDMの10%がTrueDMになり、それによって与えたDMと同じ量のHPを回復する。
スタック毎アダプティブボーナス: + 1.2-3.6AD(Lvに比例) または + 2-6AP(Lvに比例)
最大スタック時アダプティブボーナス: + 6-18AD(Lvに比例) または + 10-30AP(Lvに比例)
パッチ9.4でアップデートされた。2回調整が入り、今のステータスに落ち着いています。
TrueDMを与えられるので、ARが高い相手に有効だったり、ADそのものが上がるので、増加ADの効果を得られるスキルと相性が良いとされています。
ケインも増加ADに影響を受けるスキルにがあるので、最近採用されることが多いみたいです。
スタックによる増加AD(S)を式で表すと以下のようになります。
$$S=0.14LV+0.106\tag{2}$$
ケイン
スキル回し
W → Q → AAした場合のルーンによる違いを考えます。
ガンク時や遭遇戦において、この入り方が一番多いかなと考えたので。
Rを入れていない理由としては、スタックの管理という観点があります。
遭遇戦において、いくら征服者がADを得られるとはいえ、電撃のほうがダメージが高いことは明らかです(後ほど言及)。
征服者を選んだ場合にダメージが高くなる可能性があるのは、スタックが最大になり、TrueDMを得られたときのみです。
遭遇戦、集団戦において、Rを用いずにスタックを最大に保つことは困難であると判断したため、Rは入れていません。
決してR習得時と未習得時で計算を変えなければならかったのがめんどうくさかったわけではありません、本当です。
上記スキル回し+Rをして、征服者のスタックを溜めたあとにもう1度スキル回しをしたときを想定しています。
そのDMが電撃の遭遇戦とどれだけ違うかというところを比較しようとしていると考えていただければ良いかと思います。
形態
形態は変身前で算出しています。
どちらに変身したのかという情報を取るのが難しいため。
ビルドから多少判断はできそうだったのですが、できたとしても全試合の80%ほどで残りの20%はどちらに変身したのかわからず・・ということになってしまったので、ひとまずはスタート時点で必ず通る変身前の状態で算出します。
比較
遭遇戦
まずは、遭遇戦について考えていきます。
征服者はスタックが0の状態から開始し、W → Q → AAをした場合にルーン毎のダメージを考えていきます
電撃を持った場合に、コンボで与えられるダメージ(\(DM_1\))は以下のとおり(W: Wの基礎ダメージ、Q: Qの基礎ダメージ、AA: Auto Attackによるダメージ)。
$$DM_1=W+1.3AD+Q+1.3AD+AA+EL\tag{3}$$
次に征服者を持った場合に与えられるダメージ(\(DM_2\))を示します。
スキル回しが進むにつれて、スタックが溜まり、増加ADを得るので、
$$DM_2=W+1.3AD+Q+1.3(AD+S)+AA+2S\tag{4}$$
になります。
(1), (2)を代入して、差分を示すと
$$DM_1-DM_2=0.4AD+8.36LV+5.3AP+20.83\tag{5}$$
となりました。AD, LV, APのいずれも正の値なので、(5)が負になることはありません。
したがって、\(DM_1>DM_2\)が常に成り立つので、遭遇戦においては、征服者を選択した場合より、電撃を選択した場合のほうが式(5)分、ダメージが高いと言えます。
スタック最大時
遭遇戦は、電撃のほうがダメージが高いことを示しました。
ルーンの特徴上、当然といえば当然の結果で、数値が見れてよかったね、程度の感想しか得られません。
そこで、征服者のスタックが最大になっている場合に、どちらのほうが強いのかということについて考えることで征服者の強みを考えたいと思います。
征服者のスタックが最大時にコンボをした際のダメージ(\(DM_3\))は以下のとおり。
$$DM_3=W+1.3(AD+5S)+Q+1.3(AD+5S)+AA+5S\tag{6}$$
さらに、スタック最大時には、10%のTrueダメージを得られるので、ダメージを与える対象の物理防御(AR)を考慮する必要があります。
スタック最大時の実際に与えられるダメージ(\(DM_4\))は以下のとおり。
$$DM_4=0.1DM_3+0.9DM_3\times\frac{100}{100+AR}\tag{7}$$
一方で、電撃を選択した場合の実際に与えられるダメージ(\(DM_5\))は
$$DM_5=DM1\times\frac{100}{100+AR}\tag{8}$$
TrueDMがあることにより、変数にARが追加され、相手によっては、同じコンボでも電撃より高いダメージを出せる可能性が出てきました。
つまり、征服者のほうがダメージが高くなることを示すためには、\(DM_4>DM_5\)を満たすARを求めれば良い。
(3), (4), (7), (8)を代入し、ARを表すと
$$AR>\frac{40AD+630LV+210}{0.26AD+0.1Q+0.1W+0.1AA+0.252LV+1.908}\tag{9.1}$$
となりました。
AAは基礎攻撃力(BA)+増加攻撃力(AD)であるから、
$$AR>\frac{40AD+630LV+210}{0.36AD+0.1Q+0.1W+0.1BA+0.252LV+1.908}\tag{9.2}$$
となります。
このとき、同じコンボであっても、征服者のスタック最大時には、電撃よりダメージが高くなります。
AD, LV, Q, W, BAを求められれば、必要なARを求めることができます。
以降で具体的に必要なARについて考えていきます。
必要なARについて
レベル
必要なARを求めるためには、AD, LV, Q, W, BAを求める必要があります。
ここで、LVが定まれば、Q, W, BAはある程度定めることができます。
(1) BAについて
ケインはレベル1の攻撃力が68, レベルアップ毎の増加攻撃力が3.3であるから
$$BA=68+3.3(LV-1)(0.685+0.0175LV)\tag{10}$$
と表せます。
(2) Q, Wについて
レベルが1つ上がる度に、スキルポイント1が割り当てられるので、op.ggで最もピック率が高い順でピックしていくものとする。
スキルの上げ方は以下の表に従う。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
Q | W | E | Q | Q | R | Q | W | Q | W | R | W | W | E | E | R | E | E |
レベルが分かれば、Q, Wのレベルを求められ、ダメージも計算できる。具体的なダメージはwiki参照
次にレベルの上がり方の調査について述べていきます。
レベルの上がり方の調査
2019年3月10日時点での日本サーバにおけるマスター、グランドマスター、チャレンジャーランクのサモナーの過去の試合で、ケインがピックされている試合を調査しました。
調査対象期間はパッチ9.1-9.5の試合に絞っています。
調査方法としては、Riot Games API を用いて、ケインのみの経験値(xp)と経過時間timestampを取得しました。
データの数はそれぞれ以下のとおり。
パッチ | 個数 |
9.1 | 9 |
9.2 | 38 |
9.3 | 93 |
9.4 | 73 |
9.5 | 9 |
パッチ9.1と9.5に関しては、他と比べ、数が少ないので、特徴を表せていない可能性があります。試合データの取り方を工夫すればもっと良いデータが手に入りそうですが、ひとまずはこのデータで進めます。
パッチ毎の経過時間(分)と経験値を散布図で表し、回帰直線を書きました。
グラフからパッチ毎の経験値の上がり方は、似ていることが分かります。
傾きと初期値も以下の値となり、
パッチ | 関数 |
9.1 | \(y=512.57x-1245.68\) |
9.2 | \(y=495.49x-1109.36\) |
9.3 | \(y=503.67x-1000.16\) |
9.4 | \(y=471.79x-884.07\) |
9.5 | \(y=471.53x-955.82\) |
いずれの傾きも10%以下の差分しかないため、パッチ毎の差は小さいと考えます。
パッチ毎に分けた理由として、パッチ9.2で入ったジャングルキャンプの経験値 により、9.2以降で経験値の増え方が減ると予想していました
それぞれの傾きから多少減っているものの大きく減っているという印象はありません。なので、結果には影響していないようです。
ガンクを積極的に行い、経験値を得るなどで補っているのでしょうか。
初期値が負の値であることについて、ジャングルキャンプの発生時間の影響から1分30秒後からでないと経験値は得られません。
それをゲーム上では0と表現されますが、一次関数で表したことから1分30秒分マイナスした状態からスタートしているという考え方です。
全ての関数において、\(x=2\)のとき(開始2分時点)、0に近い値が得られます。
以上のことから、シーズン9の一般的なケインの経験値の推移はパッチ9.1 – 9.5すべてのデータの回帰直線を求めることで得られます。
上図より、時間(t)毎の経験値(XP)は
$$XP=484.85t-1015.85\tag{11}$$
経験値さえわかれば、レベルアップに必要な経験値一覧 を基に時間毎のレベルも求めることができます。
ADの上がり方の調査
時間毎のレベルを求めることができたので、次は時間毎のADを求めます。
調査データと方法は同じで、購入したアイテムの累計増加攻撃力を計算します。
アイテムのpassiveはステラックの籠手を除き、考慮していません。
ステラックの籠手だけpassiveでADが変わってくるため、考慮しています。工数見つかり次第すべてのpaasiveを実装できたらいいですね。
パッチ毎の経過時間(分)とAD回帰直線は以下のとおり。
先ほどの経験値のグラフと比べ、それぞれの傾きに差分が大きそうです。
パッチ | 関数 |
9.1 | \(y=6.88x-16.02\) |
9.2 | \(y=6.26x-14.93\) |
9.3 | \(y=4.85x-5.66\) |
9.4 | \(y=6.13x-13.92\) |
9.5 | \(y=5.75x-13.85\) |
傾きだけで見るとパッチ9.1が一番大きく、パッチ9.3が一番小さくなっています。
ここで、形態を考慮していないことの粗が出ているのかなという気がしています。
増加ADはダーキンと影の暗殺者で変わってきます。ダーキンは後半に防具を積みますし、影の暗殺者はADを上げ続けます。これにより、パッチ毎の形態の数によってADの上がり方は変わってしまいます。
パッチ9.3はマークスマン用のアイテムが巻き戻された影響でダーキンが増えたのかなというぐらいしか考察できません。本当かどうかもわかりません。
形態毎の増加ADを調べればもっと良いグラフが書けそうですが、ひとまずはこのまま進みます。
初期値が負の値であることについては、経験値のときと同じ考え方です。
シーズン9の一般的なケインの増加ADの推移はパッチ9.1 – 9.5すべてのデータの回帰直線から求めます。
上図より、時間(t)毎の増加AD(AD)は以下の式となりました。
$$AD=6.08t-13.25\tag{12}$$
ARの結果
ここまでで、征服者のダメージが高くなるのに必要なARを求めるための必要な変数について述べてきました。
これらの変数を用いて、具体的に何分の段階でARがいくつなら条件を満たせるのかというところを明確にしていきます。
時間毎の(10), (11), (12)の値を式(9.2)に入れ、時間毎の必要なARのグラフを以下のようになります。
一次分数関数のような形になりました。
式(9.2)はADの一次関数と特定の時間帯で一定数増加するLV, Q, W, BAから成り立っているので、形としては合ってそうです。
\(t\)が小さいときに、大きく上昇し、\(t\)が大きくなるにつれて増加は緩やかになっていくことがわかります。
具体的には、2分時点で38, 3分で52, 74, 85, 92, 94, 107, 111, 112, … いったように10分以降では、約110にとどまります。
レベルが上がったタイミングで電撃のダメージが上がるため、それに伴い必要なARが増えていることがわかります。
Q, Wを得られることにより、必要なARが下がると思ったんですが、それほど影響してなさそうです。
電撃のレベルの係数が大きいですから、レベル値が影響力が大きいと考えられます。
考察
必要なARのグラフから開始時点(0分時点)では、ARが17と小さくなっていますが、これはADが負の値から始まっていることが影響しているため、参考にはなりません。
実際に戦闘を行うのが2分以降なので、それ以降を見ていこうと思います。
2分の時点で38なので、これはタンクチャンピオンだと満たせます。
上位3位までのブラウム 、レオナ、タムケンが47, アリスター、ブリッツが44なので、これらのチャンピオンに対しては征服者のほうがよさそうです。
2分の時点で戦闘を行うのはインベイドをしているかレベル2ガンクぐらいなので、その時点でスタック最大値で殴り合うことができるかどうかは置いておいて。
3分以降は、必要なARが増える一方で、相手のARがそれほど増えないので条件を満たせそうにありません。
サンファイアケープ を積むにしても、バミシンダーを挟みますもんね。
征服者の効果が期待できるのが、10分以降の110でとどまっている部分です。
このあたりからタンクチャンピオンであれば、サンファイアケープやアイスボーンガントレットを購入していることが考えられます。これらにはAR+60という効果があるので、基礎ARが 50ぐらいであることを考えると十分に満たせます。
また、ジークコンバージェンス もAR+60であるので、これを積んだサポートも満たせます。ソラリのロケットになってしまうと、AR+30となってしまうので、110を超えるのは難しそうです。
まとめ
- 遭遇戦では、\(0.4AD+8.36LV+5.3AP+20.83\)分、電撃のほうが強い。
- 征服者のダメージが高くなるために必要なARは、10分までは大きく上昇し、10分以降は約110でとどまり、20分以降にレベルが上がる毎に約5 ずつ上昇する。
- タンク相手には、征服者を持っていた場合のほうがダメージが高くなることがある。
まとめるととても当たり前のことを書いているような気がしてきました。
征服者はダメージだけでなく、回復もあるので一概にどちらが良いとは言い切れないですね。
また、今回のスキル回しは戦闘時間が短いので、必要なARが高くなったのだと考えています。
他にもAAの回数が増えたり、Q, Wをもっと当てられれば征服者を持っている場合のほうがダメージが高くなるとは考えられますね。
以下は反省点
- 形態の変化考慮不足
- スキル回しの回数が増えた場合の必要ARについての検討不足
- そもそもADとEXを回帰直線で表してよかったのか
計算ミスや考え方の間違いがあると思いますので、気づきましたらご指摘ください。